解説
水銀は融点が-38.83℃と金属の中で最も低く、常温で唯一液体として存在する金属元素です。元素記号「Hg」はラテン語名「Hydrargyrum(液体の銀)」に由来します。銀白色の美しい光沢を持ち、古代から知られていた金属で、中国では不老不死の薬として珍重され、錬金術でも重要な物質とされました。かつては体温計や血圧計、蛍光灯などに広く使用されていましたが、強い神経毒性を持つため、現在では使用が制限されています。特に有機水銀化合物は水俣病の原因物質として知られ、環境汚染の深刻さを世界に示しました。水銀は熱膨張率が大きく均一なため精密な温度計測に適していましたが、環境・健康への配慮から、現代ではデジタル温度計などへの置き換えが進んでいます。天然には辰砂(硫化水銀)という鉱石として産出されます。