解説
「墨に染まれば黒くなる」は、「朱に交われば赤くなる」とほぼ同じ意味のことわざで、人は付き合う相手や環境の影響を受けやすいことを表します。起源は中国の古典『太子少傅箴』の「近朱者赤、近墨者黒」(朱に近づく者は赤く、墨に近づく者は黒し)という一節で、この二つの表現は元々セットで使われていました。
朱(赤色の顔料・辰砂)と墨(黒色の顔料・煤や松煙)は、どちらも古代から使われてきた代表的な色材です。どちらの表現も、色が移りやすいという視覚的なイメージで、環境の影響力を端的に表しています。
日本では江戸時代頃から使われ、教育や人材育成において環境の重要性を説く際に引用されます。類似表現に「麻の中の蓬」があり、良い環境の大切さを説きます。
心理学でも「ピア効果」や「社会的学習理論」として、人が周囲から影響を受ける現象が研究されており、このことわざは経験則として的を射た表現といえます。